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Alt81'S Report
引き手に宿る哲学

「Alt81はどういったブランドなのか?」。よく聞かれるこの問いに私たちはラウンド長財布に使用している引き手をもとに説明をすることがある。オンオフ関係なく使用される財布の引き手は毎日使用し、見ない日はない。だからこそ小さい部品ではあるが、そのブランドの考え方が反映され易いと言われている。ここではそんなラウンド長財布の引き手がAlt81ではどうなっているのか、またそこから見えてくる私たちのモノづくりへの考え方を知っていただきたい。

形と縫製

まずは形。先端にいくほど幅広くなっているのは持ちやすさを考慮したため、また先端を縫いやすい直線ではなく曲線にしているのは高級感を上げるため。そして縫製の終わりには糸に糊をつけて針穴に戻す「糊止め」を施していて、糸をほつれにくく、見た目にも綺麗にまとめている。

ネン引き

コバ(革の断面)と縫製の間にうっすらと引かれた線が見えるだろうか。これは「ネン」と呼ばれるもので、紳士物の革製品ではよく目にする技法だ。このネンを引く作業は、ステッチとコバの僅か約2㎜の間を、熱の通った先の尖った道具で焼き印のように引いていく。当然、熱を入れているためやり直しはきかず、少しズレるだけでもステッチが焼き切れてしまう危険性も伴う。だが、このネンが引かれることで引き手全体がピリッと引き締まる。小さい部品だからこそ利かせたい技なのだ。

肉 盛

Alt81の引き手は触るとわかるのだが、少し膨らみがある。これは「肉盛」と呼ばれるもので、上下2枚の革の間に芯材を入れて立体感を出す手法。前述したネンが革を抑えて沈み込ませる「谷」なのに対して、この肉盛は盛り上がらせた「山」のようなもので、この二つを同時に使用することで、より立体感を出している。また、この肉盛に指がひっかかり引き手が引きやすくなることも利点の一つだ。

コバ処理

前述の肉盛で「上下2枚の革」と書いたが横からみると1枚の厚い革に見える。実際には革以外に芯材も入っているために本来は何層もの断層が見えるはずなのだが、1枚に見せるようにコバを処理しているためにこのように見える。これは機能的というよりも見栄えの意味合いが強い。説明するのは簡単なのだが、実はこのコバ処理、作り手にとっては手間がかかることこの上ない。まずコバ面をやすりで磨き、段差が出ないようにした後、上からコバ液と呼ばれる液体と塗布する。さらに縫製を終えた後にも再度、ヤスリで磨き、整えている。この作業を綺麗に仕上がるまで繰り返し行う。

交換可能

いくら革とはいえ、金属と比べるとどうしてもその強度は劣ってしまう。だから引き手はすべて交換可能。万が一、引き手が切れてしまってもご連絡いただければ新しい引き手をお送りして、その場でお客様ご自身で交換していただくことができる。「引き手が切れてしまったからラウンド長財布を買い替える」、そんな理由はAlt81には存在しない。

上記のように記述させていただいたものの、あくまで私たちがどのようなモノづくりをしているかという説明にすぎず、「ここまでこだわっているから良いものだ」というつもりはない。なぜなら人によって「良い」と思うものは違い、価値も大きく異なるから。私たちにできることは自分たちが「良い」と思い、日頃から考えている物事を形にして価値を感じてもらうこと、そしてそれを伝えること。引き手のような小さな、目立ちにくい箇所だからこそ、自分たちの哲学を体現できているのかもしれない。

Alt81'S Report
引き手に宿る哲学

「Alt81はどういったブランドなのか?」。よく聞かれるこの問いに私たちはラウンド長財布に使用している引き手をもとに説明をすることがある。オンオフ関係なく使用される財布の引き手は毎日使用し、見ない日はない。だからこそ小さい部品ではあるが、そのブランドの考え方が反映され易いと言われている。ここではそんなラウンド長財布の引き手がAlt81ではどうなっているのか、またそこから見えてくる私たちのモノづくりへの考え方を知っていただきたい。

形と縫製

まずは形。先端にいくほど幅広くなっているのは持ちやすさを考慮したため、また先端を縫いやすい直線ではなく曲線にしているのは高級感を上げるため。そして縫製の終わりには糸に糊をつけて針穴に戻す「糊止め」を施していて、糸をほつれにくく、見た目にも綺麗にまとめている。

ネン引き

コバ(革の断面)と縫製の間にうっすらと引かれた線が見えるだろうか。これは「ネン」と呼ばれるもので、紳士物の革製品ではよく目にする技法だ。このネンを引く作業は、ステッチとコバの僅か約2㎜の間を、熱の通った先の尖った道具で焼き印のように引いていく。当然、熱を入れているためやり直しはきかず、少しズレるだけでもステッチが焼き切れてしまう危険性も伴う。だが、このネンが引かれることで引き手全体がピリッと引き締まる。小さい部品だからこそ利かせたい技なのだ。

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肉 盛

Alt81の引き手は触るとわかるのだが、少し膨らみがある。これは「肉盛」と呼ばれるもので、上下2枚の革の間に芯材を入れて立体感を出す手法。前述したネンが革を抑えて沈み込ませる「谷」なのに対して、この肉盛は盛り上がらせた「山」のようなもので、この二つを同時に使用することで、より立体感を出している。また、この肉盛に指がひっかかり引き手が引きやすくなることも利点の一つだ。

コバ処理

前述の肉盛で「上下2枚の革」と書いたが横からみると1枚の厚い革に見える。実際には革以外に芯材も入っているために本来は何層もの断層が見えるはずなのだが、1枚に見せるようにコバを処理しているためにこのように見える。これは機能的というよりも見栄えの意味合いが強い。説明するのは簡単なのだが、実はこのコバ処理、作り手にとっては手間がかかることこの上ない。まずコバ面をやすりで磨き、段差が出ないようにした後、上からコバ液と呼ばれる液体と塗布する。さらに縫製を終えた後にも再度、ヤスリで磨き、整えている。この作業を綺麗に仕上がるまで繰り返し行う。

交換可能

いくら革とはいえ、金属と比べるとどうしてもその強度は劣ってしまう。だから引き手はすべて交換可能。万が一、引き手が切れてしまってもご連絡いただければ新しい引き手をお送りして、その場でお客様ご自身で交換していただくことができる。「引き手が切れてしまったからラウンド長財布を買い替える」、そんな理由はAlt81には存在しない。

写真

上記のように記述させていただいたものの、あくまで私たちがどのようなモノづくりをしているかという説明にすぎず、「ここまでこだわっているから良いものだ」というつもりはない。なぜなら人によって「良い」と思うものは違い、価値も大きく異なるから。私たちにできることは自分たちが「良い」と思い、日頃から考えている物事を形にして価値を感じてもらうこと、そしてそれを伝えること。引き手のような小さな、目立ちにくい箇所だからこそ、自分たちの哲学を体現できているのかもしれない。