vol.3 ― 部位 ―
革の原料となる「原皮」には様々な動物種が使われている中、圧倒的なシェアで使用されている動物が牛革です。革は雄雌や年齢、育った土地など様々な要素の違いでその風合いも特性も表情も異なりますが、体の部位もその一つ。人間と同じように肩や背中、腹など部位ごとに特徴が違うため、商品に使用する際も秀でた特徴を活かして用途に最適なパーツに使用されます。
そこで今回は、皮革の主軸となる牛革の「部位」についてご紹介いたします。
革は、もともとは動物の皮膚から出来ています。動物から剥いだ皮を、鞄や靴などの製品へ使える状態に様々な加工を施し「革」になります。もともとの動物の皮というのは、外部からの様々な刺激や危害から身を守るために、繊維同士が絡み合い驚くほど精巧で合理的な構造をしています。しかし、皮から革が作られると言っても、皮のすべてが革として利用されているわけではないことは意外と知られていないのではないでしょうか?
まず、肉眼では見えない皮膚の構造についてご説明します。動物の皮の断面は構造の違う3つの層――「表皮層」「真皮層」「皮下層」で成り立っていることが分かります。皮膚の最も外側(毛があった側)に「表皮層」があり、その下にコラーゲン繊維が複雑に絡み合った「真皮層」、さらにその下に肉と結合している「皮下層」があります。革として利用されるのは、じつは真ん中の真皮層のみ。必要のない表皮層と皮下層は、製革工程中で除去されます。また、革となる真皮層はさらに二層に分けられており、動物特有の皮膚模様が現れる「乳頭層」(毛があった側)と、繊維が網目のように皮下組織と絡み合った「網状層」(肉面側)に分かれています。一般的に、乳頭層は細い繊維が密に配置されているのに対し、網状層は太い繊維が緩やかに絡み合っています。ちなみに革の話をする際よく耳にする「銀面」「床面」という言葉ですが、「銀面」はこの乳頭層の表面を、「床面」は網状層の肉面側を指します。つまり革となる真皮層は、細かい繊維や太い繊維束が合流したり分かれたりしながら、複雑に絡み合って出来ているため丈夫なのです。
では次に革全体に視野を広げてみましょう。革は全体でもおおよそ定まった繊維方向があり、つまり革の伸びやすさ縮みやすさに影響します。また、お話したように皮下組織のコラーゲン繊維の密度や絡み具合が違う。これは部位によって強度や耐久性が違うことを意味し、また動物が本来持つ天然のシボ(革の表面にある立体的なシワ模様)が部位によって異なる理由でもあります。つまり、一頭の同じ牛でも部位によって秀でた特徴は異なり、繊維の密度や太さ、方向と集束、絡まり具合などによって革の強度や伸び、柔軟性や弾力性が決まるわけです。 それぞれ部位ごとに特徴が異なるため、例えば肩の部分を「ショルダー」腹の部分を「ベリー」という具合に、牛や馬など大型動物は特に部位ごとに名前をつけて区別しています。ちなみに牛の場合、皮の厚さは首部分の「ネック」が最も厚く、背中部分の「バット」にかけて薄くなり、肩部分「ショルダー」から背中部分「バット」の前部、腹部分「ベリー」が最も薄くなっています。
革の部位ごとの特徴を把握することは商品製作には欠かせません。伸び縮みや強度、耐久性、シボの違いなどに大きく関与する各部位の共通した特徴はもちろんのこと、一枚一枚異なる個々の革の特性をも見極める目が必要です。例えば鞄なら、重さに耐えうるパーツには丈夫さゆがみの少なさが重要であったり、持ち手など手に触れるパーツには柔らかくしなやかさを優先するなど、用途やお客様のイメージに沿った商品を作る際一枚革のどの部位を商品の最適なパーツに切り出すかが非常に要となります。もしも秀でた特徴を無視して素材に無理をさせてしまえば、その革を使用した商品は後々に支障を来してしまう。Alt81が商品を製作する時基本としている、素材に極力負荷をかけず素材そのものが持つ魅力を最大限に活かすことの意味を、お客様が商品を通して感じ取っていただけたらと考えています。部位の特徴を知っていただき、ご自身の愛用品をじっくりご覧いただくとまた違った角度から革の魅力をご堪能いただけるはずです。
※下記項目:①=どの箇所を指すか ②=特徴
< 牛原皮の各部位 >
< その他の部位分類 >
vol.3 ― 部位 ―
革の原料となる「原皮」には様々な動物種が使われている中、圧倒的なシェアで使用されている動物が牛革です。革は雄雌や年齢、育った土地など様々な要素の違いでその風合いも特性も表情も異なりますが、体の部位もその一つ。人間と同じように肩や背中、腹など部位ごとに特徴が違うため、商品に使用する際も秀でた特徴を活かして用途に最適なパーツに使用されます。そこで今回は、皮革の主軸となる牛革の「部位」についてご紹介いたします。
革は、もともとは動物の皮膚から出来ています。動物から剥いだ皮を、鞄や靴などの製品へ使える状態に様々な加工を施し「革」になります。もともとの動物の皮というのは、外部からの様々な刺激や危害から身を守るために、繊維同士が絡み合い驚くほど精巧で合理的な構造をしています。しかし、皮から革が作られると言っても、皮のすべてが革として利用されているわけではないことは意外と知られていないのではないでしょうか?
まず、肉眼では見えない皮膚の構造についてご説明します。
動物の皮の断面は構造の違う3つの層――「表皮層」「真皮層」「皮下層」で成り立っていることが分かります。
皮膚の最も外側(毛があった側)に「表皮層」があり、その下にコラーゲン繊維が複雑に絡み合った「真皮層」、さらにその下に肉と結合している「皮下層」があります。
革として利用されるのは、じつは真ん中の真皮層のみ。必要のない表皮層と皮下層は、製革工程中で除去されます。また、革となる真皮層はさらに二層に分けられており、動物特有の皮膚模様が現れる「乳頭層」(毛があった側)と、繊維が網目のように皮下組織と絡み合った「網状層」(肉面側)に分かれています。一般的に、乳頭層は細い繊維が密に配置されているのに対し、網状層は太い繊維が緩やかに絡み合っています。
ちなみに革の話をする際よく耳にする「銀面」「床面」という言葉ですが、「銀面」はこの乳頭層の表面を、「床面」は網状層の肉面側を指します。
つまり革となる真皮層は、細かい繊維や太い繊維束が合流したり分かれたりしながら、複雑に絡み合って出来ているため丈夫なのです。
では次に革全体に視野を広げてみましょう。
革は全体でもおおよそ定まった繊維方向があり、つまり革の伸びやすさ縮みやすさに影響します。また、お話したように皮下組織のコラーゲン繊維の密度や絡み具合が違う。これは部位によって強度や耐久性が違うことを意味し、また動物が本来持つ天然のシボ(革の表面にある立体的なシワ模様)が部位によって異なる理由でもあります。
つまり、一頭の同じ牛でも部位によって秀でた特徴は異なり、繊維の密度や太さ、方向と集束、絡まり具合などによって革の強度や伸び、柔軟性や弾力性が決まるわけです。
それぞれ部位ごとに特徴が異なるため、例えば肩の部分を「ショルダー」腹の部分を「ベリー」という具合に、牛や馬など大型動物は特に部位ごとに名前をつけて区別しています。ちなみに牛の場合、皮の厚さは首部分の「ネック」が最も厚く、背中部分の「バット」にかけて薄くなり、肩部分「ショルダー」から背中部分「バット」の前部、腹部分「ベリー」が最も薄くなっています。
革の部位ごとの特徴を把握することは商品製作には欠かせません。伸び縮みや強度、耐久性、シボの違いなどに大きく関与する各部位の共通した特徴はもちろんのこと、一枚一枚異なる個々の革の特性をも見極める目が必要です。
例えば鞄なら、重さに耐えうるパーツには丈夫さゆがみの少なさが重要であったり、持ち手など手に触れるパーツには柔らかくしなやかさを優先するなど、用途やお客様のイメージに沿った商品を作る際一枚革のどの部位を商品の最適なパーツに切り出すかが非常に要となります。
もしも秀でた特徴を無視して素材に無理をさせてしまえば、その革を使用した商品は後々に支障を来してしまう。Alt81が商品を製作する時基本としている、素材に極力負荷をかけず素材そのものが持つ魅力を最大限に活かすことの意味を、お客様が商品を通して感じ取っていただけたらと考えています。
部位の特徴を知っていただき、ご自身の愛用品をじっくりご覧いただくとまた違った角度から革の魅力をご堪能いただけるはずです。
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< その他の部位分類 >