削ぎ落とし、引き締めて魅せる
かぶせを開いた瞬間目に入る、縁の凛とした直線ライン。そこに宿る引き締まった印象は「化粧裁ち」と「ころしネン」という作りから来ている。これらは見映えをより美しく仕上げる作りの一つで、緻密な技術が一段と際立つ小物に使われることが多い。まず最初にお伝えしておきたいのは、この手法が施されている箇所は商品の表面ではないこと。財布や名刺入れのかぶせを開けた時にのみこの作りは明らかになる。つまり決して目立つ箇所とは言えないが、この手法があることで開いた時に削ぎ落とされたシャープな印象をしっかりと加えてくれるのだ。
この「化粧裁ち」と「ころしネン」を施すタイミングはマチを縫製した後、いわば最終工程だ。
そのため、作業はとりわけ細心の注意が必要となる。
作業の順にご紹介したい。まずは最初に行う「化粧裁ち」。これはへり返しなどを行った際に出る余分なへり部分の革を手裁ち包丁を使って職人が手作業でカットする手法を指す。へり返して余った革のみを包丁で裁断していくわけだが、使用している革によって厚みもオイルの含み具合も柔軟性も異なるため、その革に最適な力加減で真っ直ぐに、かつ下にある革を傷つけることなく裁たなければならず、極めて慎重さを伴う作業だ。ミシン目の横に至極わずかな間隔のみを残して丁寧に裁つことで、極力無駄を削ぎ落としたシャープなラインが生まれるわけだ。
化粧裁ちを終えたら次に施すのが、ころしネン。そもそもころしネンとはネン引きの一つである。熱と圧力によって革にラインを入れるネン引きは、同じスピードかつ同じ力加減で引く技術が求められる難しい作業。通常ネン引きの目的はピシッと引き締まった見た目を得るために行うことが多いが、このころしネンはこの効果に加えてもう一つ、「革を抑える」役目を担っている。ネンを引く時に発生する熱を利用して化粧裁ちした革の縁をしっかり抑え込むことで、使用を重ねるうちに起こりがちな革の剥がれを抑えることが出来るのだ。これは、より長く使えるための工夫とも言える。 先にお伝えしたように「化粧裁ち」「ころしネン」、これらの作業は最終工程で施す。つまり失敗が許されない。手間がかかる上、神経を研ぎ澄まして挑む手作業の連続で成立している作りなのである。
ではなぜAlt81がこれほど手間のかかる作りを商品に込めたのか――それはシャープな直線ラインが備わることで、削ぎ落とされ引き締まった男性らしさをプラス出来ること。また使用する革によって異なる映え方を商品にもたらすこと。そして、普段は見えない箇所に施されていることも関係している。表立って見えない細かなところにまで気を配る、行き届いた美しさ。そして名刺を差し出す瞬間、会計を行う瞬間にだけ現れる、隠し持った鋭さ。この作りに潜む、日本独特の美意識とひけらかさない謙虚さには「目に見えない日本の文化」が込められているとAlt81は考えている。
削ぎ落とし、引き締めて魅せる
かぶせを開いた瞬間目に入る、縁の凛とした直線ライン。そこに宿る引き締まった印象は「化粧裁ち」と「ころしネン」という作りから来ている。これらは見映えをより美しく仕上げる作りの一つで、緻密な技術が一段と際立つ小物に使われることが多い。まず最初にお伝えしておきたいのは、この手法が施されている箇所は商品の表面ではないこと。財布や名刺入れのかぶせを開けた時にのみこの作りは明らかになる。つまり決して目立つ箇所とは言えないが、この手法があることで開いた時に削ぎ落とされたシャープな印象をしっかりと加えてくれるのだ。
この「化粧裁ち」と「ころしネン」を施すタイミングはマチを縫製した後、いわば最終工程だ。
そのため、作業はとりわけ細心の注意が必要となる。
作業の順にご紹介したい。まずは最初に行う「化粧裁ち」。これはへり返しなどを行った際に出る余分なへり部分の革を手裁ち包丁を使って職人が手作業でカットする手法を指す。へり返して余った革のみを包丁で裁断していくわけだが、使用している革によって厚みもオイルの含み具合も柔軟性も異なるため、その革に最適な力加減で真っ直ぐに、かつ下にある革を傷つけることなく裁たなければならず、極めて慎重さを伴う作業だ。ミシン目の横に至極わずかな間隔のみを残して丁寧に裁つことで、極力無駄を削ぎ落としたシャープなラインが生まれるわけだ。
化粧裁ちを終えたら次に施すのが、ころしネン。そもそもころしネンとはネン引きの一つである。熱と圧力によって革にラインを入れるネン引きは、同じスピードかつ同じ力加減で引く技術が求められる難しい作業。通常ネン引きの目的はピシッと引き締まった見た目を得るために行うことが多いが、このころしネンはこの効果に加えてもう一つ、「革を抑える」役目を担っている。ネンを引く時に発生する熱を利用して化粧裁ちした革の縁をしっかり抑え込むことで、使用を重ねるうちに起こりがちな革の剥がれを抑えることが出来るのだ。これは、より長く使えるための工夫とも言える。 先にお伝えしたように「化粧裁ち」「ころしネン」、これらの作業は最終工程で施す。つまり失敗が許されない。手間がかかる上、神経を研ぎ澄まして挑む手作業の連続で成立している作りなのである。
ではなぜAlt81がこれほど手間のかかる作りを商品に込めたのか――それはシャープな直線ラインが備わることで、削ぎ落とされ引き締まった男性らしさをプラス出来ること。また使用する革によって異なる映え方を商品にもたらすこと。そして、普段は見えない箇所に施されていることも関係している。表立って見えない細かなところにまで気を配る、行き届いた美しさ。そして名刺を差し出す瞬間、会計を行う瞬間にだけ現れる、隠し持った鋭さ。この作りに潜む、日本独特の美意識とひけらかさない謙虚さには「目に見えない日本の文化」が込められているとAlt81は考えている。